例年通りならGoogle I/Oが開催される時期ですが今年はもちろん中止。
ただアメリカの新学期に当たる9月に向けて企業は着々と準備を進めているようでこのタイミングでHPからエンタープライズモデルHP Elite c1030 Chromebook Enterprise、HP Pro c640 Chromebook Enterprise、HP Chromebook Enterprise 14 G6が発表されました。
企業向けラインナップなので個人が入手できるかは不明ですが、色々と新しい可能性を感じるモデルなので取り上げようと思います。
図らずも時流に乗ったChromebook
猛威を振るうコロナの影響で米国でもリモートワークに移行しているのですが、自宅作業しているユーザーの60%近くが個人用PCで作業しており、セキュリティ上の課題があるとのこと(HP調べ)。
対策として企業が従業員にPCを支給したり貸し出したりすることを考えるとクラウドサービスを問題なく利用可能でセキュリティ性が高く、導入・管理・保守が容易で比較的安価なChromebookが第一候補になること当然の流れ。
ChromebookはPCの将来の姿を先取りして開発されたものですが、皮肉なことにコロナでその流れが加速してきている感じです。そんなニーズをとらえたのが今回のHP Chromebook Enterpriseシリーズということになります。
リモートワークになると最大10人まで同じファイルを同時にリアルタイム編集ができるGoogle系のオフィスアプリであるDocs、Sheet、Slidesなども勢力を増しそうです。
今までイマイチ使い道のなかったChromebook備え付けのウェブカメラもZoomなどで役に立つ時が来たようだ。
キーワードはプライバシー&モバイル性
今回発表されたエンタープライズモデル3機種全体の特徴ですが、共通しているのはWebカメラのハッキングを防ぐ「HP Privacy Camera」技術を搭載している点とExtended Range LAN(XR機能)で無線の届く範囲が大幅に増加している点が挙げられます。
バッテリー持ちも全体的に長めで90分で90%まで充電可能なHP Fast Chargeに対応しています。
さらに3モデルすべて米軍の調達品基準MIL-STD 810テストに適合するタフなモデルに仕上がっています。
全体的に重量はChromebookとしては標準的(最上位モデルで1.35kg、その他は1.5kg程度)。モバイル性ということであればもう少し軽ければ言うことがないのですが、重さに関する感覚はアメリカ人と日本人では大きく相違があるためやむなしといったところ。
MIL-STD 810テスト適合機はゴツくダサくなりがちなのですが、見た目は厚みも含めとてもスタイリッシュでとてもMIL-STD 810テスト適合機と思えないレベル(いい意味で)。ここはとてもよく出来た方だと思います。
次に個別の機種を見ていこうと思います。
HP Elite c1030 Chromebook Enterprise

13.5インチのコンバーチブルでアスペクト比3:2のディスプレイを搭載。額縁が本体比90.1%と超狭額縁。フラッグシップ的なモデルに仕上がっています。
HPの調査によると現行のChromebookの中では一番額縁が狭いとのこと。細かいですがディスプレイの下のHPのロゴがHP Spectre x360にも搭載されているものになっていて高級感があります。
オプションですがプライバシースクリーンを搭載する世界初のChromebookとのことでボタンを押すことでディスプレイが覗き見防止になる「HP Sure View Reflect」を備えています。

さらにChromebookの中では初(one of the first)といってもいい「Project Athena」(プロジェクト・アテネ)に準拠したモデルになっています。プロジェクト・アテネというのは、詳しくは
インテルがノートPCの新たなイノベーションプロジェクト「Project Athena」を始動 - PC-Webzineアーカイブ | PC-Webzine
にありますがノートブックPCの使用体験を刷新するという触れ込みでインテルが策定したノートPCの開発プロジェクトで「人間の理解に根ざしたイノベーション」が実装されるとのこと。
ここだけ聞くとよくわかりませんが「常に利用可能」「フォーカス」「適応性」というのがキーワードで具体的には
- 即座に電源がオンになりスリープからも瞬時に復帰、バッテリーが一日持つ
- AIや音声アシスタントの搭載によりユーザーのニーズに合わせてパフォーマンスが最適化される
- スペックの最低要件がある
- 狭額縁の設計でモニターがより大きくなり作業のしやすさ・集中力の持続性が確保される
- ノートPCのフォームファクター(形態)も2in1を含め薄型で軽量性を備えた製品が想定されている
などが挙げられています。要するに次世代ハイエンドノートブック。
「Project Athena」に準拠しているモデルはインテルのお墨付きということでそれを示すステッカーを貼ったり宣伝したりとプロモーションに利用できるようです。
参考:インテルがノートPCの新たなイノベーションプロジェクト「Project Athena」を始動 - PC-Webzineアーカイブ | PC-Webzine
オプションでLTEが利用可能でWi-Fi 6を標準装備とのことです。発売は8月を予定で価格は未定。
HP Pro c640 Chromebook Enterprise

HP Pro c640 Chromebook Enterpriseは14インチのクラムシェルモデルですがスタイリッシュなデザインながらMIL-STD 810Hに適合するタフなモデル。MIL-STD 810Hに適合するChromebookの中では最薄とのことです(HP調べ)。350mlまでの防滴仕様でバックライトキーボード搭載と魅力的なモデルです。
第10世代Coreプロセッサを搭載しバッテリー持ちは最大12時間。こちらのモデルもWifi 6を標準装備。発売は6月、価格は未定です。

HP Chromebook Enterprise 14 G6
あまりHPらしからぬ武骨なデザインのHP Chromebook Enterprise 14 G6。

こちらは現行のChromebookらしいモデルですが、Wipeableキーボードというものを搭載しているようです。詳しくは説明がないですが、ウイルスを除去できるという記述から察するにアルコールや除菌シートで拭くことが出来るものということになりそうです。さらにしっかり防滴仕様。バックライトキーボードはオプション。
CPUはCeleronのN4120もしくはN4020でRAM ~8GBまで/ストレージ ~128GBまで。HDMI出力ポートにUSB Type-Cと安心の装備。バッテリー持ちは13.5時間と、これも安心感があります。
こちらは既に販売を始めているらしく価格は$399からとのこと。
まとめ
特にセキュリティ面で様々な進化が見られたHPのエンタープライズシリーズ。無線が届く範囲が伸びたり、キーボードを拭くことができたりと時流に合った個性的な発想もあり面白い。推移を見守りたい。